映画『霧の中の風景』

幼い姉弟の父親を見つける旅は、
「父」の元へとみまかる旅だった。

きょうだいはまるで、この世の人間ではなく、
出会う人、道行く人それぞれが
かつて持っていた子供の心
純粋さの象徴、夢、天の使い。
旅芸人のオレステスは、
大切にしていた旅芸人で居続けることを
諦め、軍隊に入ることを選ばざるを得ない。
国や時代に翻弄され、いじめられて。
彼は姉弟に言う
役者は難しい仕事なんだと。
人を泣かせて、笑わせて、
演じるのは「自分の役」
この一座が演じるのは「たった1つの演目」
それは1人の人間の一生

子供たちは最期まで、
父親がドイツに居ると信じ続ける。
あたかも
神は必ず存在すると信じる信仰心のように。
人は一生の間に、
何を信じ、何を裏切って生きて行くのだろう?

画面はどのシーンも絵画的で
絵としての構図を強く意識されている。
役者の立ち位置も厳格に点で決まっていそう。
時折さし挟まれる
前後の脈絡が抜け落ちたような
突然のシュールなカット。
そのシュールさが、旅に非現実感を与え
ありふれた風景のはずが、
見る者に詩を感じさせる。

子供の時の思い、記憶を
大切にしたいと思う映画だった。